雑談が生産性向上に影響していることをご存じでしょうか。
雑談は、メンバーが持つ知識や経験、ノウハウを共有するためのツールとして重要であると言われています。
実際に、企業がメンバー同士の雑談を誘発するため、休憩室の活用やコミュニケーションが活発化するようオフィス設計がされるようになってきました。
雑談が注目されはじめた背景には、インターネットの普及によるコミュニケーションの希薄化があります。
VUCA時代とも呼ばれる今を生きるうえで、働く人は自ら学習し、知識や経験・ノウハウを身につけ、行動していく力が求められています。
※VUCA:グローバル化やIT技術の進歩により現代の経営環境や個人のキャリアを取り巻く環境の急激な変化により予測不能な情勢を示す用語(Volatility:変動性 Uncertainty:不確実性 Complexity:複雑性 Ambiguity:曖昧性 )
こうした変化の早い環境下において、雑談による信頼関係の構築、メンバー間の知識や情報・ノウハウの共有は、生産性向上に大きな効果を発揮しています。
今回は、そんな雑談について取り上げます。
知識や情報・ノウハウの共有による生産性向上については、過去の記事でも取り上げてますのでご一読を!
目次
コールセンターでの先行研究
雑談と生産性との相関について職場の活発度(身体的な動きの度合い)の観点から調べた研究があります。
研究は、ウェアラブル端末を用いて、アウトバウンド型のコールセンターで働くメンバーの行動を計測し、受注率への影響を調べます。
本研究の結果を先に言ってしまうと、休憩中の活発度が受注率に影響を与えることが分かったのです。
さらには、業務中の活発度は休憩中の活発度とは異なり、受注率と相関しないという結果も出ています。
つまり、休憩中の対面によるコミュニケーションが活発度に影響し、活発度の変化が受注率に影響することが研究から明らかになりました。
そのほか、雑談の有用性に着目し、雑談の誘発方法についての研究もされていますので紹介します。
<参考>
渡邊純一郎、藤田真理奈、矢野和男、金坂秀雄、長谷川智之「コールセンタにおける職場の活発度が生産性に与える影響の定量評価」(「情報処理学会論文誌」Vol.54 No.4(2013年4月15日発行))
知識継承・情報共有を目的とした雑談誘発に関する研究
組織内でのコミュニケーションの重要性は、皆さんご存じの通りだと思います。
今回紹介する研究は、「仕事に関する雑談」を誘発する仕掛け、および人間関係構築のきっかけを作る仕掛けの検討についてです。
業務に関連した情報を表示する大型ディスプレイを休憩室に導入することで、直接的にメンバーの興味・関心を呼び、その内容をテーマとした雑談が始まるのではないか?という研究です。
結果として、期待通りに雑談を誘発した一方、あまり親しくないメンバー同士では期待する効果が得られないことが研究から分かりました。
そこで、本研究では、人間関係を構築する仕掛けについても検討しています。
休憩室において、個人で行う行為(珈琲をカップに注いで飲む等)を複数人でなければできないようにし、その効果を検証しています。
詳しくは、下記論文をご参考ください。
<参考>
藤野秀則、北村尊義、下田宏、石井裕剛、浦山大輝、大倉杏菜、西口幸太、棟友優香「業務における知識継承・情報共有を促す「休憩所での雑談」を 生み出す仕掛け」(2017年度人工知能学会全国大会)
雑談を生むマグネットスペースの活用
ここまで、雑談の有用性およびその雑談を誘発させるための研究が行われていることについて触れてきました。
雑談は、人間関係を円滑にし、時としてメンバー間の知識や情報、ノウハウの共有を促します。
ここでは、雑談を生むマグネットスペースについて紹介します。
マグネットスペースとは
マグネットスペースとは、休憩室やコピー機、給湯室など磁石のように人々が自然と集まるスペースのことを指します。
普段は、部署のメンバー同士で関わりがないという声も少なくありません。
そのような環境下において、マグネットスペースでは、同じ部署はもちろん、他部署のメンバーともコミュニケーションが生まれ、新しい発見の機会が多く見られます。
そんなマグネットスペースを活用している代表的企業を2つ紹介します。
活用事例1:合同会社Google
みなさんご存じGoogleです。
国によってオフィスの特徴はバラバラですが、休憩室においては社員がストレスなく快適に過ごせる設計になっており、クリエイティビティ溢れるデザインとなっています。
一度は、こんなオフィスで働いてみたいですね。
Googleのオフィスについてより詳しく知りたいという方は、下記記事がとても面白いので覗いてみてください。
活用事例2:LINE株式会社
LINEでは、社内カフェの床に、あみだくじや、けんけんぱといった遊び心が加えられており、コミュニケーションの機会をカバーしています。
2021年4月には、本社が新しくなり、内装なども一新されています。
すれ違いざまの一声も有効
インターネットの普及によって、アナログ的なコミュニケーションが減ったと感じる方も多いのではないでしょうか。
さらには、働き方改革が推進され、雑談を無駄な時間と捉える方もいるでしょう。
確かに淡々と作業をこなすことで個々人の生産性は上がるかもしれません。
しかし、組織全体を見た時に風通しの良い働きやすい職場をつくることができれば雰囲気が明るくなり、雑談から新しい発想や斬新なアイディアが生まれる可能性もあります。
雑談に関する研究や、雑談を含めたコミュニケーションを促進するためのオフィスづくりなど、ここまで注目されていることには理由があるのです。
明日から出社時の挨拶はもちろん、休憩室や通路でメンバーとすれ違ったときに一言声をかけてみてはいかがでしょうか。
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